
もう「PMS」という呼び方がすっかり市民権を得た「月経前症候群」。
かつては、月経前のいらいらを主体に、「月経前緊張症」と呼ばれていました。
その頃は体調不良を訴える女性に、その症状はいつも月経前に現れますか? そして月経が来ると消えますか?と、診察室でお話を伺いながら、診断をしたもので、あまり周知されていなかったのですが、最近では問診票に「PMS」と患者さんが書いていることが多くなりました。
さて、婦人科診察では、「ホルモンのバランスが悪い」「ホルモンが足りない?」など、ざっくりとホルモンという単語が使われていますが、卵巣から出る女性ホルモンの代表格、エストロゲンや、排卵後に分泌される黄体ホルモン、また女性でも男性ホルモンであるテストステロンも分泌されますし、これらのホルモンを分泌させるために下垂体や視床下部からのホルモンもあります。
さて、PMSの症状に、「いらいら」や「気分の不安定」、「うつ」「情動失禁」などがあるためでしょうか、「ホルモンが不安定でPMSがひどいんです」と考えている患者さんが少なくありません。
が、これは間違いです。
そもそもPMSは排卵がきちんと起こり、排卵後に黄体ホルモンが分泌されることが原因なのです。
原因は黄体ホルモンです。
黄体ホルモンは、排卵後に受精卵が子宮に着床するのを助けるため、子宮内膜を成熟させます。
つまりPMSがある、ということは黄体ホルモンがきちんと分泌されている、排卵しているのです。
しかし、排卵しているすべての女性がPMSがあるわけではなく、PMSの機序は完全に解明されているわけではありませんが、この黄体ホルモンがセロトニンなどの感情を左右するホルモンの分泌に関わっているようです。
PMSの治療には、排卵を抑制するためのOC(低用量ピル)や漢方治療、また大豆イソフラボンから作られるエクオールが作れない人にはエクオール含有サプリメントが効果的です。その他、生活習慣の改善やリラクゼーション、カウンセリングなども有効とされています。
妊活中の方はOCは使えません。その方に合った治療法が選択できます。