桜井 明弘 あなたが33歳を過ぎて妊娠できない44の理由

【インタビュー】男性初の不妊症看護認定看護師 菅野伸俊さん

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5.5組に1組が、不妊検査や治療をしていると言われていますが、日本全国にいる不妊治療のプロフェッショナルである生殖専門医は850名強。一方、不妊症看護認定看護師は約180名しかいません。 

しかも、男性側もしくは、男女ともに不妊の原因があるカップルは半数近くあると言われているにも関わらず、男性認定看護師はわずか2名だけです。

男性初の不妊症看護認定看護師で、妊活コンシェルジュサービス「famione(ファミワン)」の菅野伸俊さんにお話を伺いました。

不妊症看護認定看護師を目指して

不妊症看護認定看護師の菅野伸俊(かんの のぶとし)さんが、生殖医療に携わったのは今から20年以上前のこと。

「当時、勤めていた総合病院の医師から『精子と卵子に触れる仕事、やってみたい?』、エンブリオロジスト(胚培養士)になってみないか?と聞かれたことがきっかけでした」(菅野さん 以下、同)

日本では1983年に初めて体外受精児が誕生しましたが、菅野さんが生殖医療に出会った1990年代後半は、まだまだ生殖医療は一般的ではありませんでした。

まだ培養士の資格制度ができる前だったため、当時は明確に誰が何をやるというのが決まっていなかったそう。看護師と並行して、培養士の仕事も始めた菅野さん。

「でも、当然ながら精子や卵子って話しかけてこないんですよ(笑)。やっぱり看護師として人と関わる仕事が好きだったので、やはり看護師がいいなと。その後、睾丸から精子を抽出する治療が日本で始まった頃、その男性不妊の講演を聞く機会があったんです。それで、そんな仕事があるのか!と感動して」

1999年、木場公園クリニック院長の吉田淳先生の男性不妊の講演を聴いた菅野さんは、翌2000年に同クリニックに転職。生殖医療の現場で専門知識を積み重ね、認定看護師制度(2003年スタート)を目指すにいたったそうです。

不妊症看護認定看護師とは、

①不妊に悩むカップルおよびその家族、生殖機能の維持・温存を必要とする対象者に対して、専門的な知識と技術を用いて、水準の高い看護実践できる能力を育成する

②不妊症看護分野に置いて、看護実践力を基礎とし、他の看護職者に対して指導できる能力を育成する

③不妊症看護分野において、看護実践力を基盤とし、他の看護職者に対して相談対応・支援ができる能力を育成する

(日本生殖看護学会ホームページより)

を目的とした専門カリキュラムを履修し、現場での豊富な実務経験も有した不妊治療看護のプロフェッショナル。患者さんやそのご家族に寄り添いながら、治療のアドバイスをする存在でもあります。

女性メインの現場でできること

男性初の認定看護師となった菅野さんでしたが、そもそも今まで働いた不妊治療の現場では、同僚看護師は全員女性でした。

そして、不妊治療はやっぱり女性がメイン。

「昔は特にそれが顕著でした。女性は治療のため、月に何度も通院する必要がありますが、男性が病院に来るのは、精液検査の時と、あきらかな男性不妊がわかった時だけ。また、女性はプロセスを大事にするので、途中でいろいろ相談しながら進んいきますが、男性は自分でどうしていいかわからなくならないと相談はしません。もう火事ボーボーで立ち行かなくなって初めて動き出すんですよね。それは今もあまり変わりません(苦笑)」

例えば、精子がいないとわかった時、手術当日、一緒に手術室に入り、その後どのようにケアしていくかを菅野さんは考え続けているそうですが、「それこそ男性は術後半年、長い人だと2年くらい一人で悶々と抱えて、自分では抱えきれなくなって相談に来る人もいます。男性不妊に限らず、夫が何を考えているかわからない、ステップアップの時に意思決定を二人でどのように行うかなど、女性に対して『男性はこういうところがあるから、こうした方がいいんじゃないか』とアドバイスする機会も少なくありませんでした」

どこでも同じ治療が受けられるために

今、菅野さんは妊活コンシェルジュサービス「famione(ファミワン)」で不妊症看護認定看護師として活動しています。

「認定看護師になり、同じ専門を持つ看護師のつながりができて痛感したのは、病院は横のつながりがないということ。患者さんにとってはどこに行っても一緒の治療を受けられるのがベストなはずなのに、それができていません」

自身で勉強会を開くなど、地道に活動を続けてきたが、やはり限界がありました。

「特に地方では、相談できる場所もありませんが、ファミワンならどこに住んでいる人からも相談を受けることができます。特に、このコロナ禍において、オンラインで相談できるメリットは大きい」といいます。

「今は、ネットやブログなどで情報は溢れていますが、今後は、孤独に悩むのではなく、病院

の先生に聞いてもよくわからなかった、相談するところがないという人との架け橋になれれば」

そう語る菅野さん。アフターコロナを見据えた、新しい妊活や不妊治療の形がこれから出来合っていきそうです。

LINEを使った妊活コンシェルジュサービス「famione(ファミワン)」。不妊症看護認定看護師など専門家たちが妊活サポートをしてくれる。

LINEを使った妊活コンシェルジュサービス「famione(ファミワン)」。不妊症看護認定看護師など専門家たちが妊活サポートをしてくれる。

 

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吉田 理栄子

吉田 理栄子フリーライター兼編集者

投稿者プロフィール

情報誌の副編集長、編集長などを経て、38歳で第1子出産。産後6カ月で復帰し、産休取得者第一号として新たな道を切り開こうとするも挫折。2015年よりフリーランスのライター兼編集者として活動。女性の働き方や健康などをテーマに、当事者の視点から美人化計画に関わる。

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