美人化対談~映画監督と「生きること」を語る☆1
- 2016/3/14
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◆子役への贖罪がこの映画の原点
―――お二人が出会ったのは中学時代ですよね。お二人が過ごした高崎の中学もそんな感じだったのですか?
桜井「ずいぶんハードな転校生活を送ってきたというのは前に少し聞いたかもしれないし、今初めて聞くこともあるけれど、それでいうと、高崎は牧歌的だったね。」
六車「あそこは風景がいい。学校から帰るのに線路の上を歩いたり、まさに『スタンドバイミー』だったね。」
桜井「確かに。電車が来るか、線路に耳をつけたりしてたなあ。」
六車「大事なことはそういう子ども時代のリアルな経験なんだと僕は思う。自然のすごさには勝てない、子どもの頃って何が必要かっていうと何といっても自然。人里はずれた山の中に入ると聞こえているか聞こえていないかはわからない音や、正体不明の何かを感じた。現代の生活では、出かけるのは目的地があり、そこに着くということが大事で道中に何が起きるかは関係ない。でも、山や自然というのは行きつくまでの間に魑魅魍魎(ちみもうりょう)がある。それは大人より子どものほうがより感じるし、子ども時代にそういうことを体験させたい。これはすごく大きいと思う。」
桜井「大人はもうわかっちゃってる部分が多いからね。そういう意味でもこの『リトルパフォーマー風の鼓動』はぜひ子どもたちに観てもらいたいね。ところで、今回子どもを取り上げた理由は何?」
六車「ふたつあって、ひとつは、子どもと真剣に向き合わないといけないと思った」
桜井「というと??」
六車「僕はテレビの世界でたくさんの子役を使う仕事をしていた。これはしょうがないことではあるが、やはり売れている子役、いわゆる『お芝居のできる』子役と仕事をするんだけど、大人の役者と違ってストレスがたまるんだな。」
桜井「そのストレス、具体的に知りたい」
六車「子役を使うと言うのは製作者の姿勢が問われると思うんだ。子どもを利用して作ってはいけない、と思いながら、本当にそうしているかという葛藤がストレスになる。
今回は、真剣にむきあって、いわゆる「お芝居」抜きの芝居ができるまでつきあって撮りたいと思った。だから時間もかかったしストレスがたまった(笑)」
(監督が子どもを撮ったもう一つの理由とは???次回に続く)
映画「リトルパフォーマー風の鼓動」 (シネマート新宿 16:45~)
公開中 大阪シアターセブン 5月6日まで
※六車監督作品、「シャドーキッズ」も上映中です。
風の音を「どっどど どどう」と表現した宮沢賢治。心臓の鼓動を思わせるこのリズムを子供たちの踊りを用いて感動的に描いた作品です。演技経験のない一般の小学生を主役に抜擢し、約1年かけてレッスンを行い、廃校を舞台に真夏に撮影。画面からはちきれるような子どもたちの汗と笑顔と涙。涙の後に明日を生きる勇気が湧いてきます。「風の又三郎」が現代に新しい形で蘇る!
六車俊治監督プロフィール
1969年長崎県佐世保市出身。1992年、テレビ朝日に入社。数多くのテレビドラマを演出。2005年に退職後、映画監督、舞台の演出・脚本、テレビドラマ演出などを中心に活動中。おもな作品に「エースをねらえ(TV)」「月下の棋士(TV)」「仮面ライダーアギト(TV)」「クロヒョウ 龍が如く新章(TV)」「恋人はスナイパー(映画)」「バッシュメント(映画)」「SHADOW KIDS(映画)」など。