桜井 明弘 あなたが33歳を過ぎて妊娠できない44の理由

無痛分娩て、社会復帰が早いの?

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無痛分娩のデメリットは?

まず、無痛分娩を希望され、行われる場合、通常の分娩費用に加えてコストがかかります。もちろん多くの医療器材や医薬品を使いますし、下に挙げるようなリスクを管理する手間と人手が必要です。

また、どの分娩施設でも行うことが出来るわけではありません。上に挙げたような「医学的適応」に限ったり、そもそも無痛分娩は行っていない、と言う施設もあります。

最近では無痛分娩を行っている施設、とまとめたサイトもあり、探すのに便利なこともありますが、そう言ったサイトでは漏れている施設もあります。

 

では、実際に行われる場合のデメリットは、

・硬膜外麻酔に伴うトラブル

最初に書いたような麻酔薬が血管内に入ってしまう(局麻中毒)ことや、きちんとした位置にカテーテルが入っていても、局所麻酔薬によって血圧が下がったりすることもあります。血圧の低下は胎盤、臍帯を通して赤ちゃんに供給される血液の量も減少する恐れがありますので、注意が必要です。

その他、脊髄液の漏出、くも膜下腔への誤注、神経損傷、硬膜外血腫、硬膜外膿腫、硬膜下ブロック、局所麻酔アレルギーなどがあります。

なかでも局麻中毒とくも膜下腔への誤注入は呼吸停止や心停止にいたる可能性があります。だからといって無痛分娩は危険で母体死亡が多いというわけではなく、しっかりとした手順で確認作業を行うことによって死亡に至るような合併症を未然に防ぐことが可能です。

・微弱陣痛と回旋異常

硬膜外麻酔は陣痛の痛みだけを和らげるのが理想ですが、多くの場合子宮の収縮も弱めてしまいます。これは微弱陣痛と行って、分娩時間が長引き、母体は痛みが少ないのであまり影響がないかも知れませんが、産まれてくる赤ちゃんにとってはストレスを受ける時間が長引く、と言うことになります。

また、赤ちゃんは通常、狭い骨盤から腟を通ってこの世界に産まれてきますが、その際、絶妙に頭を回して出てきます。これを回旋、と呼びますが、弱い陣痛が、その回旋をうまく行かせないことがあるのです。

これらの微弱陣痛、回旋異常のため、分娩の最後に、器械で分娩を助ける鉗子分娩や吸引分娩、となることも少なくありません。

 

無痛分娩を選択するときには、これらのリスクが説明され、納得して受けますが、今回の報道に関するニュースで、「無痛分娩は社会復帰も早い」ということがさも当たり前のように書かれていました。また我々の施設で妊娠にいたり、分娩施設でへの紹介を検討しているときにも、産後は早く復職したいから、と、無痛分娩を希望される方もいらっしゃいますし、ネット上でもそのような情報が少なくありませんね。

私も無痛分娩を行っていましたが、分娩自体は痛くありませんから楽です。

しかし、無痛分娩を行わなかった妊婦さんも、産後4〜6日くらいの入院期間を経ると、無痛分娩の方の回復とあまり違いは見られませんでした。

ましてや退院後、産後休暇の2ヶ月の間には、全く違いはなくなり、社会復帰には影響は無いのではないでしょうか。

 

お一人お一人が感じる疲労や痛みには主観もあります。

初産よりも2人目以降の分娩の方が、一般的には楽です。

そう言った偏りも考えて、情報には接して欲しいと思います。

 

十分説明を受け、納得して分娩に臨み、かけがえのない赤ちゃんを無事に抱きしめて欲しいと思います。

 

この記事執筆にあたっては、美人化計画サポートドクターの、はぐくみ母子クリニック院長の輿石太郎先生にご校閲頂きました。

(初出:2017年5月11日)
(補筆修正:2017年5月18日)

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桜井 明弘

桜井 明弘産婦人科クリニックさくら 院長

投稿者プロフィール

2007年4月に横浜市青葉区に産婦人科クリニックさくらを開業、地域の女性のライフサポートを信条とした診療と、体外受精など高度生殖医療も行う不妊治療を柱にしてきました。

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