「あの日」の痛み。もしかして内膜症?
- 2016/1/21
- 医療

「生理痛」=「子宮内膜症」ではありませんが、それでも子宮内膜症患者さんの多くが生理痛、月経困難症に悩まされています。
生理痛が強い方の方が、将来内膜症にかかるリスクが高い、と言うデータもあります。
子宮の周囲に「癒着」がある場合、特に直腸のある子宮の後方の癒着が月経痛に深く関与しています。
また「子宮腺筋症」は子宮内膜症の中でも特に強い月経痛を伴うことが多いです。
どんな鎮痛剤も効かず、偽閉経療法を行ってもすぐ再発、
どうしても痛みに我慢ができず「子宮をとってください」と相談にみえた、
結婚後間もなく、まだ妊娠の経験がない患者さんが涙ながらにお話されたことが忘れられません。
月経痛以外の「痛み」にはどんなものがあるのでしょうか。
特に重症の子宮内膜症では、子宮後面に直腸が癒着した場合、「排便痛」や「性交痛」がみられます。
排便痛は月経のときにみられ、ひどくなると月経と関係なく、排便のたびに痛みます。
子宮と癒着した直腸に、固形の便が通過する際、排便時に子宮との癒着部分が引き伸ばされ、痛みとして感じられます。
同様に性交時には、この部分が刺激されますので、やはり痛いのです。
ひどくなると月経痛よりこれらの痛みのほうが辛く、
女性のQOL(Quality of life、生活の質)を低下させる大きな因子となっていることもあります。
内膜症が進行し、さらに癒着の程度がひどくなると、月経痛、排便痛、性交痛の程度もますます重くなり、
やがて、「慢性骨盤痛」に至ります。痛みは生理と関係なく起こり、
ほぼ日常的に鎮痛剤を服用しなければならない方もあります。
また、子宮の前面には膀胱があり、これらが癒着しているとき、「排尿痛」があり、膀胱炎と勘違いすることがあります。
その他、これは明らかに言われているわけではありませんが、私が内膜症患者さんたちから聞く症状で、
「排卵痛」が強い傾向がある気がします。
排卵痛はご存知の通り、排卵時に感じる下腹痛で、敏感な方は、どちらの卵巣から排卵しているか、分かります。
排卵痛は生理現象の一つで、月経痛と比べて軽いことが多く、鎮痛剤など服用することも少なくないですが、
重い症状のため、内膜症がなくても内膜症に準じた治療をすることもあります。
子宮内膜症による痛み、痛みだけを対象とするなら、治療法の第一選択はやはり鎮痛剤です。
他の理由から、手術や他の治療法が優先されることもあります。
内膜症のある方はもちろん、「これは内膜症症状かな?」と思われる方、また内膜症のない女性、男性にも、
内膜症がいかにQOLを低下させるか、少しでもご理解いただけたら、と思います。
患者さんにとっては、病気の特徴と症状の原因を理解し、
個人個人の状況、価値観、症状に適した治療法、疼痛管理が必要と考えています。